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​あけおめ。

「おや、『ジャック様』。あけましておめでとうございます」

「何だこの野郎。テメェがその名前で呼ぶと寒気がする」

セクレト機関の一画で、静かに火花を散らせている2人。

冬の寒さに備えたコートを着ているジャック・アルファード

レティシエルと共に機関内部を歩いていたベルディ・ウォール

どちらもエルグランデの人間ではなく、別の世界から来た人間。

猟兵、そしてセクレト機関に協力してくれる者達だ。

……が、この2人。

とある人物を巡って、すこぶる仲が悪い。

一応ベルディはジャックの剣の師匠筋なのだが……。

「なんでテメェがこっちの世界に来てんだよ。俺だけでいいだろ」

「あなた様がアルム様を連れてくるのが遅いから私が来ただけですよ?」

「アルムは記憶喪失だっつってんだろ。その状態で帰れるワケがねぇ」

「しかし、“何年も”記憶喪失状態から戻せるか見当がついてないのはおかしいですねぇ?」

「ぐぬっ……」

そう、この2人。

アルム・アルファードに関係することになると、喧嘩っ早い。

ジャックもベルディもアルムが幼い頃から付き添っているため、保護者としての立ち位置が強い。

ジャックはアルムの婚約者で、ベルディはアルムの騎士で師匠。

お互いを尊敬するということはあれど、『自分のほうがアルムを見守った期間が長い』という

妙なプライドのほうが勝ってしまっているようだ。

「や、やめようよ2人とも~……」

そんな2人の睨み合いをレティシエルがなんとか止めようと頑張っている。

流石に別の世界だし、色んな人に見られるし、迷惑がかかるからと。

これが箱庭世界の神様かと言われたら、ハイそうですとしか言えないのがなんとも言えない。

「アルムを助けるのは俺だっつってんだろ!」

「いいや、私です! 何があっても!」

「テメェは引っ込んでろ堅物!」

「うるせぇ厄ネタ!!」

​「誰かこの2人止めてぇーー!!」

新年早々、喧嘩腰から始まったこの2人。

いったい今年は何が起こって、どうなってしまうのやら……。

これは、猟兵達の秘密の物語。​

​記録と記憶に残るだけの、小さな物語。

​シークレット・テイル

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