


Curse of Thorns
ソール物質がないという点だけでも、かなりの被害が広がっているが……。
中でもローラントはかなりの重症であった。
そんな彼に燦斗は声をかけ、意識の確認と状態の確認を行う。
「…………」
「あなたが喋れない理由はエミーリアから聞いていますが……」
「…………」
「その口元が縫われているというのは、本当ですか?」
「…………」
小さく首を縦に振ったローラント。
息も絶え絶えながら、それでも自分の置かれている状況を少しずつ、鮮明に伝える。
彼は、呪いの影響で喋ることが許されない。
ローゼンミュラー家に伝わる『茨の呪い』は、一度声を上げれば世界に穴を開ける。
開けた穴は二度と閉じることはなく、世界の傷として残され……
……そこから先の情報は不明。何が起こるかは、燦斗ですら知らない。
ローラントがこれまでに発してきた言葉という言葉は全て、
コントラ・ソール《天声《ナレーター》》によって伝えられていた。
脳に浮かんだ言葉を直接音に変換して言葉を伝えるという、変則的なコントラ・ソールだ。
だが、現在ソール物質の減少により彼は言葉を発することすら許されない。
情報を落とそうにも、落とせないのがなんとももどかしい。
「ひとつ、お聞きしたいんですが」
そんなローラントに対して、燦斗はある疑問をぶつけた。
……なんてことはない。『茨の呪い』を他に持っている者がいるかどうかだ。
燦斗はこの呪いで出来る世界に開いた穴がなんなのか、もう気づいている。
それは今、セクレト機関では《ゲート》と呼ばれて調査人たちが使用しているものだ。
《ゲート》は本来、人為的に作成は不可能。それこそ司令官システムの手が入らなければ。
だからこそ世界と世界を繋ぐための道を作れる力をミメーシスが放っておくわけがない。
可能な限り、先手を打って呪いの所持者を保護しなければ。
「…………」
対するローラントは震える手にペンを握りしめ、文字を書いた。
『自分以外のローゼンミュラーの人間はいない』
『けれど呪いを持っている人はまだいる』
『でもその人達はもう』
そこまで書かれたところで……燦斗に声をかける人物がいた。
「茨の呪いの所持者はローラント以外なら、俺とザビーネ。既に確保は終わってるよ」
「……ナターシャさん」
司令官システムから機械の肉体を借り受けて地上に降りた男が、そこにいた。
更新履歴
2026.5.10 トップ更新
久しぶりの更新です
2025.11.23 トップ更新



これは、猟兵達の秘密の物語。
記録と記憶に残るだけの、小さな物語。
シークレット・テイル