


Where were you?
エルドレットがマリネロの街で調査を続ける頃。
司令官システムの面々もまた色々と情報を集めていた。
とはいえ、司令官システム側もゲートの先の世界の情報がないため、
エルドレットから預かった情報のみで世界を特定させなければならなかった。
「ただいま」
その間に、何処かのデータセンターに出かけていたアステリが戻ってきた。
セクレト機関から各街のデータセンターへの移送や破棄。
各街のデータセンターからセクレト機関への提供や情報精査。
そのどちらも司令官システムの中から1人が選ばれて役割を担っている。
今回はその役割をアステリが担っていた形で、今の今まで何も知らされていない。
ゲートの先の情報が彼に入ってきたのは、機関へと帰還した直後のようだ。
てんやわんやの状態で、マリアネラがアステリに声を掛ける。
「伯父様おかえり~。情報精査いっぱいだよ~」
「え、そうなのか。……参ったな、ヴィル・キャスクから注文入ったんだよな」
「えっ、データ移送あれで終わってなかった?」
「いや、終わったんだけどね。農業学校のデータ更新したいって追加注文入って」
「あれま~」
農業専門都市『ヴィル・キャスク』。
エルグランデの食糧事情を過半数担う都市では、学校でも農業を行う。
そのデータはセクレト機関側から提示された物を使い、次年度の農作物を決めるそうだ。
今の時期からすぐに準備しないと、次年度開始時にてんやわんやするそうで。
そのためヴィル・キャスク担当であるザビーネに移送を頼もうとしたが、
あいにくとゲートの先の情報を調べるため彼女は手が離せない。
ましてや《忘却《オルビド》》の力を持つ彼女を今回外すわけにもいかない。
そのため現状ほとんど事情や情報を知らないアステリが引き続きデータ移送を引き継ぐことにした。
「じゃあ伯父様の方は動けないから~ってみんなに伝えておくね」
「ああ、うん。そうしてくれるかな」
「だからって変なところ行かないでよね~??」
「はいはい。スーやザビーネさんによろしく言っておいてね」
そう言って、アステリは並列作業でデータを整えてくれたザビーネから受け取って、
すぐさまヴィル・キャスクのデータセンターへと向かう。
その後他の街のデータセンターからの更新作業が入ったのは、言うまでもなく……。